「僕は正直、現代アートに疎いんだけど。」と言い切ってしまうそんな嘘のない男性。

今回取材させていただいた唐澤さんは鉄工所の社長であり、ジャズミュージシャンであり、そしてアーティストでもあります。

「マルチ」という一言で片付けてしまうのはカンタンですが、話を聞いているうちに、経験を積み重ねるということの結果がその形になったというのがじわじわと伝わってきます。

特に若いうちは見た目ばかりにとらわれて気づくことが出来ない「かっこいい大人」になるための物の見方や考え方。

常に自身に足りないものから逆算して習得するという唐澤さん自身が編み出した「したたかな三枚目スタンス」。

そういう人が描く作品だからこそ、どこか親しみやすくて人間臭い雰囲気が出るのだと思います。

鏡を見ているばかりでは磨く事が出来ない、真の「男の磨き方」を大公開。

紅の豚よろしく「かっこいいとはこういうことさ」という台詞が頭をよぎってしまったそんなインタビューでした。

唐澤龍彦

趣味・特技・一言: ピアノ、歌、絵 エドワード・ゴーリーに一言。サイン下さい。
○○な3曲かアルバム3枚:
無人島に持っていく1枚に選んだ事がある
「habanera」SimpleAcoustic Trio
「The Nightfly」 Donald Fagen
「Serenity」Bobo Stenson

毎日続けるための描き方を考えている

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ーーもともとアーティストっていうのは目指されていたんですか?

唐澤 うーん。20代くらいの時に、ものすごい駄目な時期があったんですよ。
今で言うニートになるっていう怖いもの知らずな所もなかったですし、かといって就職する覚悟もなかった。
結局、そのときは父親の仕事を継いでしまったんですけど、ただ、その中で「絵を描く」という事は好きでそれだけは続けていましたよね。

ーーそれはやはり子供のころからずっと。

唐澤 今思うとそうですね。子供のころからマンガを描いてたり。コマ割りして、ストーリーなんかもあったりして。

でも上手じゃないんですよ。
その当時流行っていたアニメっぽい物は得意じゃなくて、ほかの子供が作らない変なキャラばっかりつくってましたね。ピーナッツっぽい人間だったりとか。

今でもそうなんですけど、そういう技術優先だったり、緻密に何かを描写するものは苦手だったんですよね。

最近作っているペン画の作品も、下書きなんかせずにそのまま描き始めるんですよ。下書きを鉛筆でかくと消しゴムをかける手間もかかってきて時間がかかってしまうんで。

そうなるとやっぱり毎日つづけるのが難しくなる。それが続けられるように、あえて手を抜ける方法でやっているというところはありますね。

ーーそれが「らしさ」にもつながっているという事でしょうか。

唐澤 そうかも知れませんね。
まぁ、このやり方の良いところは、実際に物の形を理解しながら描いているので、ある種のトレーニングみたいなところもあると思います。

逆のやり方で試してみる。

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ーー一瞬見たときにクレヨンっぽい画材で描かれていると感じたのですが、この絵はどのような画材で描かれているんでしょうか。

唐澤 アクリル絵の具ですね。

基本的に僕が作品で色を塗るときには、最初に下地を真っ黒に塗るんですよ。
で、そこに色を乗せていくという形なんですよね。

学校で習う絵の描き方って言うのは、白いキャンバスに影とか形を盛り込んでいく描き方だとおもうんです。影を掘り下げていく描き方というか。

僕がやっているのは逆で、影を残した形で、手前に光を盛り上げていくという形なので。
塗り残したところが影のまま残りますから独特な感じになりますよね。

ーー不思議なテクスチャーですよね。

唐澤 もともと普通の水彩の絵なんかもかいていたんですけど、自分じゃなくてもできるなとおもってやめちゃったんですよね。
ポートレート見たいな作品もつくっていたんですが、写真をもとに描いているから、二次元のものを二次元に写すという事になってなんか違うなと。それをやり続ける事が出来なかった。

ーーこれからはどのような描き方をしていこうと考えていますか。

唐澤 この間、子供の教育プログラムをキッズバレイという団体で行ったんですが、そのときにスチレンボードをつかって反立体の看板作品を作ったんですよ。
ああいう方法で少し奥行きがある物もおもしろいなぁ。とおもいましたよね。

前々から実は「フラット3D」みたいな物に興味があったんですよ。紙人形芝居のようなものにね。

日本には立版古※っていう、立体的な作品が昔から存在するそうで、浮世絵の作品を切って自分で舞台を作っていく紙人形劇みたいな感じのものがあったらしいんですよ。

そういうフラットなんだけど奥行きがあるみたいな物を映像としてやってみたいというのはありますね。

「自分にあった仕事を探す。」という考え方は少し違うかなぁ。

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ーー作家活動の他に普段仕事をお持ちという事ですが。

唐澤 はい。金属加工業をやっています

ーーそこではどのような物をつくっていらっしゃるんですか?

唐澤 いわゆる「板金」です。
主にステンレスと鉄の板を切って曲げたり溶接したりするという、そういう仕事ですね。
量産品という物ではなくて、プロトタイプかカスタム品。
依頼があればなんでも作りますよ。

      スペシャリティ珈琲を提供するItoyavoffee factoryに依頼されて製作した作品

 

 

ーーなるほど。じゃぁ、平日はそのお仕事されていて、作家活動はその合間でやっているということですね。

唐澤 そうですね。

ーー仕事と作家活動のバランスについてはどういう風にお考えでしょうか。

唐澤 僕は人に言うときには、「仕事は仕事」で「趣味は趣味」って言う風にいっているんですよね。
自分の信条としては、「楽しかったら仕事じゃない」って言うところがあるんですよね。
仕事っていうのは生活を成り立たせるためにやっている訳であって、それをやる上で好きな事をあきらめたくないって言うのはありますね。

ーー趣味だけで生活が成り立つとしてそれで食べていこうと思った事はありますか。

唐澤 それはやってみないと分からないとおもうけど、自分のなかでは不可能だって思っているところはあるんだと思いますね。

人によっては「仕事に生き甲斐を。」見たいな考え方もあるとおもうんだけど、そこはひねくれているのか、そういう風に思えないんですよね。

ただ、新聞なんかで、今の若い人たちが技術的なものを習得する前にすぐに仕事をやめちゃう。見たいな事が書かれているんですが、それはもったいないかなぁ。

やっぱり仕事って言うのは10年くらいやってみないと、合う・合わないとかも分からないと思うんですよ。

だから「自分にあった仕事を探す。」という考え方は僕は少し違うかなぁって感じます。
実際に仕事に自分を合わせるくらいの気持ちでやらないと、どこに行っても自分を活かせないと思いますし、そういう意味もこめて「楽しかったら仕事じゃない」って思っていた方が気楽ですよ。

ーー例えば、仕事で得た事が作家活動に活かされるという事はありますか。

唐澤 それは分けて考えるといっても、自分の一つの生活の中でおこっているものだから、必ずどこかでリンクしているところはありますね。

ーー表現方法の手段として仕事で得た技法をつかっても、作品はあくまで仕事ではない。

唐澤 そうですね。それで食べていこうとおもっていないですからね。
そこが作家としてだらしないのかなぁ(笑)

※立版古
http://tatebanko.com/about/

協力:伊東屋珈琲2号店Itoyacoffee factory(ギャラリースペース)

<第一回 終>