少し前になりますが、台湾の「国立故宮博物院」を訪問した時のことです。

あの蒋介石が日本軍の侵攻、および毛沢東の共産党との戦いの際に疎開させていた中国の至宝達の終着地がここになります。

工芸品から書、彫刻、かつての皇帝が使ったといわれるものまでとにかく展示品が多い。1日ではとても見きれる点数ではありません。

お約束ではありますが、かの有名なヒスイでできた白菜「翠玉白菜」や、天然石メノウでできた豚角煮そっくりの「肉形石」はちゃんと拝んできました。

「肉形石」を作った職人さん。
自然の石を豚の角煮に見立てるなんて、本当になんて豊かでユーモラスな感情を持っているんだろうと感心します。
さらにとても好感が持てる。
普段の生活の身近にあるものについての「愛」。
見る人が思わず「これ、本当に石?」と笑ってしまうくらいの質の高さ。
きっと本当に角煮が好きでなければこういう作品は作れないでしょう。

逆に、ちょっとびっくりしたのは、巨大な「絵画作品」にいくつも押されている印鑑の数について。
例えば、明代の董其昌という画師の「夏木垂陰」という画。

紙に置かれた墨の濃淡と筆致の細かさと表現の豊かさが、とても巨大で雄大な自然を眼前にした際の感情の広がりと幻想的な雰囲気を見事に表現しています。

ただ、気になるのは、画の上部に押された「印鑑」の数が異常に多いこと。

なぜこんなに多く押されているのかと現地ガイドに尋ねると、どうも昔はこの絵の所有者が変わる度にその家の印鑑が絵に押されるのが慣習だったそうなのです。

画師としてはかなり複雑な心境だったとおもうのですが、完全に絵は「財産」という目線だったんですね。

「かつての皇帝の印鑑と同じ場所に自分の家の印鑑を押してやった!」というなんとも顕示欲を満足させる行動な気がして画がとても良かっただけに、なんとも言えない複雑気持ちになりました。

ただ、そういう印鑑ですら「歴史的付加価値」ということなんでしょうかね。

人間っていうのはいろんな欲にまみれて生活しているんだなぁ。と改めて異国の地で感じてしまいました。

oasis_sk

『ARTYOURS』のウェブ担当。
現在は、制作会社のデザイン課長。


大学ではスケボーをしながら表千家茶の湯同好会に所属。さらに学芸員の資格を取得するというやりたい事はとりあえずやってみる主義。

お店で日本酒を注がれている瞬間が最近一番の幸せ。