以前東京で一人暮らしをしていた部屋は、どこにでもあるような白い壁のちいさなワンルームだった。
そこには、ドローイングと写真作品がそれぞれ2点ずつ、版画作品が1点、合計5点の作品を飾っていた。
オークションで落札したもの、海外のギャラリーで直接購入したもの等、どれもとても気に入っていて、数年間一緒に暮らした作品だった。

去年の夏、東京から群馬に引っ越して生活環境が大きく変わった。
現在の住まいは、庭木や畑に囲まれた静かな場所に建っていて、土壁、障子、床の間がある日本家屋だ。

引っ越しの際に一緒に持ってきた5点のうち、1点のドローイングだけが部屋に飾ってって、床の間には新しく手に入れた作品をかけている。

・アート作品を売却する

先日、今は飾っていない作品のうち2点を手放すことを決めた。

気に入っていた作品だったが、今の環境やこれからの暮らしを考えたとき、どうしても生活の中にその作品があることが想像できなかったためだ。

作品を手放すならオークションに出してみようと思い、早速連絡をいれた。

オークションハウスに作品の詳しい情報(画像、サイズ、技法等)を送ると、専門のスタッフが審査を行い、オークションに出品可能かどうかの回答と、出品可能な場合はオークションエスティメートの見積もりを出してくれる。
どんな作品でも出品できるわけではないが、アートマーケットの中で取り引きされている作品(例えばオークションのカタログに掲載されている作家の作品等)は比較的出品可能な場合が多い。

出品に際して手数料やカタログ掲載料がかかるのが一般的だが、きれいに撮影された作品の写真がカタログに掲載され、下見会などの展示を経て、欲しいと思ってくれた人の手に渡るのは、過程を見るのは案外うれしいものだ。

・アート作品の旅

カタログ等に記載されるアート作品の情報には“来歴”という項目がある。
どこのギャラリーが発表し、どんなコレクターが所有してきたか等の作品にまつわる歴史やエピソードが作品の評価の重要な要素になり得るからだ。
魅力的な旅をしてきた作品は、より魅力的な作品として多くのコレクターに求められる。

やっぱりアート作品は人の目に触れるところにあるのがいいと思う。

アート作品を手放すのはなんとなく気が引ける。
そんな風に思うのは私だけではないだろう。
だけど、倉庫で眠っている作品があったら、旅に出すことも考えてみるといいかもしれない。
 

 

片山 亜希子/アートアドバイザー

2008年より美術品を売買する仕事に従事し、2015年までオークション会社に勤務。
リーマンショック後の激動のアートマーケットの中で、現代美術を中心とした数多くの作品に触れ、国内外の様々な顧客を相手に経験を積む。
現在は退職し、フリーとして活動中。
群馬県在住。

IMG_1918