「学芸員の得意ジャンルで、ものすごく館や展示の特徴が出るんですよ。」
というのは、東京のある区立美術館の学芸員の方から伺った話です。

「学芸員」というのは、美術館や博物館で働いている人の事で、英語表現ではキュレーターと呼ばれています。

かくいう私も、大学では「不真面目」ではありましたが、学芸員の資格を取る為の勉強をしておりました。
講義の内容としては、道具の扱い方や保存の仕方。展示をする時の導線の取り方。
化石の発掘の仕方なんてのもありました。
今思えば、かなり面白い内容ではあったとおもうのですが、
お恥ずかしい限りで殆ど記憶の彼方に置いてきてしまいました。

そんな私でも一つだけ印象に残っている授業があります。
それは、
「自分が企画する(ことを想定した)展示のパンフレット作り」
というものでした。

ジャンルは何でもよいということでありましたので、僕は「小袖」というカテゴリを選択いたしました。
実は「小袖」を選んだ理由もあまり覚えていないのですが、(多分しょうもないことだったに違いない…)実際に印象に残ったのは、「小袖」の事ではなく、
「自分が選んだ物をどうやって良く見せるか。」
という事にものすごく没頭したという記憶なのです。

それまで「小袖」に対してあまり興味がなく、現在のようにインターネットもそんなに普及していない時代だったので、まずは大学の図書館にいって本を探す作業から始めました。

探してきた文献の中にかいてある「小袖」にまつわる記事を、
「えいやっ」と最初は意気込んでノートに写すのですが、
それから2〜3分後には、うつらうつら…としてしまう。

「作っている本人が眠いんだから、見に来る人はもっと眠くなるに違いない。」

そう思いましたので、目線を変えて知識を「体感」してもらえば良いのでは…
と考えるようになりました。

例えば、
菱川師宣筆「見返り美人」の作中で女性が着ている「小袖」のレプリカを作って、来場者が実際に試着、撮影できるようにすればおもしろいのではなかろうか。

もしくは、プロジェクタで実際に来場者の身体に小袖の映像を映しだせるようにしたらどうか。
(その当時は「こんな事は遠い未来でないと出来っこ無い。」とおもっていましたが、今現在ではプロジェクションマッピング等、それに近しい技術がどんどん生まれていますね。)

知れば知るほど、もっとわかりやすく興味をもってもらえるように。
見る人が退屈にならないように…
と考えて期限ギリギリまで粘っていたのを覚えています。

この課題を通して感じたのは、「見せる側のプライド」もあるという事。

芸術史に残るような作品はどれもすばらしく、こだわりも凄いものばかりです。
その作品を紹介するのが美術館や博物館、ギャラリーと言う事であるならば、
そのこだわりに対して一番の「理解者」が学芸員ないしギャラリストでないと、お客様と芸術の橋渡し役は十分に勤まらないと思うのです。

そんな「見せる側」の仕事に気を配って見ていくと、より深く作品のことも知る事が出来るのではと思うのです。

またお気に入りの“芸術家”だけではなくて、
お気に入りの“学芸員”を探すというのも、美術館へ行くアプローチとしては面白いのかもしれません。

“見せる側”のこだわりの仕事に対してもわかりやすく紹介できる連載も持てれば…
そして、私が「うわっ、今回、書いている事は何と浅いところで話していたんだ!!」
とガツンと教えてくださるような…そんな取材してみたいです。

oasis_sk

『ARTYOURS』のウェブ担当。
現在は、制作会社のデザイン課長。

大学ではスケボーをしながら表千家茶の湯同好会に所属。さらに学芸員の資格を取得するというやりたい事はとりあえずやってみる主義。

来年の2月の阿波踊り合宿にむけて、冬将軍や忘年会に負けず走り込んでおります。